人類が使う全ての情報を集め整理すると言う壮大な目的をもって設立されたGoogle。情報検索から始まったサービスはその対象範囲を1歩ずつ、しかし確実に広げている。遂には鎖国体質のSNSにオープンプラットフォームの思想を持ち込み、キャリア大国主導の携帯電話にもオープンプラットフォームの提供を発表した。今回も欧米の植民地化政策にとって美味しい狩場の日本に黒船が来た状況を思い出してしまう。
SNSはもう数多サービスが存在するするが、趣味や嗜好、生活環境、友人の友人などを通じて多かれ少なかれ人と人とを繋ぎ疎結合のコミュニケーションを実現する。日本ではmixiやGREE、海外ではMy Spaceなどが存在するが、SNSを利用する大抵の方はどこか1つだけ参加するだけではご自身の目的は達成されず、または学校や会社の要望に応える為に、時に友人の期待に応えられずに複数のSNSに参加している事だろう。その結果、同じようなプロファイルや日記を複数のSNSに登録して運営する事になり、不便さを感じている事が多いはず。
当初その不便さはSNS運営サイドのメリットだった。SNSにとって自分のサービス内にユーザを囲い込み、サービス内でユーザが情報を生み出し、サービス内で情報を連携させる事で、ユーザに対して対価を生み出す事は、SNSにとって存在意義ですらある。いや、あった。
同じ事が携帯電話業界でも言えた。かつて携帯電話に2Gが登場した時代、携帯電話を通じてメールやウェブを利用できるようになり、携帯電話で様々なアプリケーションを利用したり、ウェブを参照して良いんだと気付き、通信事業者はそのサービスプラットフォームをポータルとしてユーザに示した。首尾よく通信事業者に認められたサービスやWebサイトは公認サイトと呼ばれ、それ以外のサービスは勝手サイトなどと勝手に呼ばれる始末。余りの殿様状態に総務省から指導が入り多少門戸が広げられたものの、Googleなどのモバイル検索サービスが台頭するまで厳しい状況だった。
さらに未だに携帯電話端末の機能は携帯用OSを開発サイドで閉じて提供される為、利用者が自分で使い易い携帯へとカスタマイズする事は難しい状態が続いている。携帯電話だって最近のデスクトップ事情の如く、Widgetなどデスクトップアプリケーションを利用するように使えるはずなのに。
SNS環境も携帯電話OS環境も、 自分たちの世界を作り上げに成功して箱庭世界の中で巨大な収益構造を作っていた。そんな平和な世の中に黒船Googleの手が入る。検索、地図、電子決済、ニュース、本などが次々と開国されていった中、今回はSNSと携帯OSの世界に開国状が突きつけられた。
OpenSocialによるSNSのオープンプラットフォーム化
プレスリリース時点ではEngage.com、Friendster、hi5、Hyves、imeem、LinkedIn、Ning、Oracle、orkut、Plaxo、Salesforce.com、Six Apart、Tianji、Viadeo、XINGが参加を表明、その後My SpaceとBeboが参画発表。そして日本でもあの腰の重いmixiが参加のリリースを発表。最大手My Spaceを押さえた事でアメリカでの基盤化を確定的に、またmixiを押さえた事で日本でのデファクトAPIとなる事は確定。Googleも資本を出しているが、Microsoftが主導するFacebookがOpenSocialのAPIを活用すると発表するのも時間の問題か?
OpenSocialは、以下の3組の共通APIから構成される。 これを利用することによってデベロッパーはSNSの中心となる機能と情報にアクセスすることが可能になる。多くの場合、複数のSNSで共通で利用されるインターフェースなりアプリケーションとなるだろう。
・プロフィール情報(ユーザー・データ)
・友達情報(ソーシャル・グラフ)
・活動情報(ニュースフィード、その他、実際の活動)
Googleの野心的「OpenSocial」APIの詳細判明―木曜日にローンチへ
androidによる携帯電話のオープンプラットフォーム化
こちらもプレスリリース時点で圧倒的な顔合わせ。
Aplix (www.aplixcorp.com), Ascender Corporation (www.ascendercorp.com), Audience (www.audience.com), Broadcom (www.broadcom.com), China Mobile (www.chinamobile.com), eBay (www.ebay.com), Esmertec (www.esmertec.com), Google (www.google.com), HTC (www.htc.com), Intel (www.intel.com), KDDI (www.kddi.com), LivingImage (www.livingimage.jp), LG (www.lge.com), Marvell (www.marvell.com), Motorola (www.motorola.com), NMS Communications (www.nmscommunications.com), Noser (www.noser.com), NTT DoCoMo, Inc. (www.nttdocomo.com), Nuance (www.nuance.com), Nvidia (www.nvidia.com), PacketVideo (www.packetvideo.com), Qualcomm (www.qualcomm.com), Samsung (www.samsung.com), SiRF (www.sirf.com), SkyPop (www.skypop.com), SONiVOX (www.sonivoxrocks.com), Sprint Nextel (www.sprint.com), Synaptics (www.synaptics.com), TAT – The Astonishing Tribe (www.tat.se), Telecom Italia (www.telecomitalia.com), Telefónica (www.telefonica.es), Texas Instruments (www.ti.com), T-Mobile (www.t-mobile.com), Wind River (www.windriver.com).
Google Press Center: Press Release : Industry Leaders Announce Open Platform for Mobile Devices
主だった所が参画しているように見えるが、海外ではAT&TやVerizonが参画していない。日本ではドコモとKDDIが既に名を連ねている。KDDIは既にauでgmailや検索サービスの利用を進めていたし、ドコモも検索でGoogleとは連携してたが、心中穏やかでは無いだろう。SoftbankなどYahoo!Japanを参加に収めているんだから今後の動向に注目だ。
ドコモ「端末開発コスト削減につながる」
NTTドコモは「共通プラットフォームを活用すれば、開発コストの低減や開発期間の短縮ができ、W-CDMAの普及にもつながる」と期待する。
携帯電話のOSやユーザーインタフェースが端末ごとに異なることが、開発コストを高めていると長く指摘されてきた。端末に依存しない共通プラットフォームなら、他端末用に開発した機能やアプリをそのまま流用するなどして開発コストを削減できる。加えてAndroidは無償。Googleは「端末の開発コストが10%抑えられる」としている。
さらにドコモは「OHAに参加する各社と連携できること」もメリットに挙げる。同社は今後、他社との連携した取り組みを進めていく方針。「総務省の『モバイルビジネス研究会』でも携帯サービスはオープン化していく必要があると指摘されてきた。Androidだけでなく、今後もオープンにやっていきたい」KDDIは「多様化したニーズに応えるため」
KDDIは独自の統合プラットフォーム「KCP+」を開発。今冬モデルから採用しているが、それと並行してAndroidも活用していくという。「KCP+だけですべてのユーザーのニーズを満たせるかどうかは分からない。Androidも活用し、多様化したユーザーニーズに対応していきたい」(KDDI)
また「KCP+は多様なアプリケーションがデフォルトで入っていて、不要な機能は削減していくというスタンスだが、Androidは、必要なアプリケーションをプラスしていくという発想に見える」と同社の広報担当者は話し、構築の考え方自体が異なるのではという見方を語った。ソフトバンク孫社長「日本ではヤフーの方がGoogleより使われている」
国内の大手3キャリアで唯一、OHAに参加していないソフトバンクモバイルの孫正義社長は、11月6日に開いた決算会見の席で「Googleの件は認識していたが、取り組むかどうかは決めていない」とした上で、「LinuxやSymbian、TRONなど、どのOSを選ぶかは端末メーカーがコストダウンと機能アップの観点から決めること。事業者として提携しないとできないことはないのでは」と話した。
また「ユーザーはOSを意識しておらず、その上にのっているアプリケーションやコンテンツがスムーズに動くかどうかが重要。日本ではヤフーの方が、検索やメールサービスも何倍も多く使われている。ソフトバンク・ヤフーグループとして、どういうOSであれ、その上のアプリケーションで存在感を出していきたい」とコメントした。
ドコモとKDDIはGoogleの「統一基盤」をどう活用するのか
ただし、携帯電話のプラットフォームは様々なプレーヤーが存在している。オープンプラットフォームの利用だけではメーカーにとって収益モデルを作りづらいから、既に端末を提供しているメーカーの選択と消費者の選択に掛かっている。容易にGoogle化という流れにはならないだろう。
ちなみに、このandroidとほぼ真っ向から戦うことになるのが、(1) MicrosoftのWindows Mobile、(2) Nokia+Symbian、(3) Ericsson+Motorola+UIQ (資料5)、(4) Qualcomm BREW。少し番外で追いかけるのが、SavaJを買収した (5) Sun Microsystems (資料6)。そして、マイペースで我が道を行くのが(6)アップル(資料7)。すごいメンツだ。
gPhone雑感:「モバイル・プラットフォーム戦国時代」の幕開けだ
なんて事を考えながら、利権の絡まない一消費者としては便利な環境へと進むことに期待です。はい。
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